こんにちは、消化器内科医のべっちょむです。
前回は便潜血検査についてお話させていただきましたが、その中で大腸癌が頻度の高い疾患であり、診断には必ず下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)が必要であることをお伝えしました。
でも、大腸カメラをしないといけないと分かっていても実際どんな感じで行われるのか分からず不安で足踏みしている方も多いと思います。そんな方のために、今回は大腸カメラの方法や実際の流れなどを解説していきたいと思います。
本記事を読んで、少しでも不安を和らげて検査を受ける一助になれば幸いです。
この記事を書いた人
べっちょむ先生
資格:内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓専門医。FP2級、簿記3級。
消化器内科を専門とし、病気だけでなく患者さんを幅広く診れる医師でありたいという思いから、2024年4月から訪問診療を行っています。
一児の父。映画鑑賞と温泉が至福の時。ゴルフとキックボクシングもやってます。
1 大腸カメラって何?
①大腸の解剖と機能
そもそも大腸の解剖についてですが、大腸は小腸の次の臓器で盲腸→上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸の順にあり最後に肛門があります。
全長約1~1.5mの長さで、機能とては胃や小腸で消化されてドロドロになった食べ物の水分を吸収する働きが主になります。
②大腸カメラをして診断できる疾患
大腸カメラでは肛門からカメラを挿入していき、まずは一番奥の盲腸まで進めていきその後に空気を入れながら観察していきます。ちなみに大腸カメラの太さは12~13㎜程度で大体指の太さくらいです。また、空気といっても大腸カメラでは体内に吸収されやすい二酸化炭素が使用されることが一般的でお腹が張ることによるしんどさを軽減するよう工夫がなされています。
診断できる病気は大腸癌やポリープをはじめ、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患(IBD)や大腸憩室、感染性腸炎、痔などがあります。直接腸の中に入り込んで観察するため、細かい表面構造の観察ができ、生検で組織をつまんで病理検査に提出したり、ポリープを切除することもできます。
③大腸カメラは痛い?
大腸カメラが苦痛な検査なのか痛いかどうか、気になるところだと思います。
結論から言いますと、個人差が大きく全然痛くない方から冷や汗が出るくらい痛かったという方もいらっしゃいます。
これは大腸の形や固定のされ具合、伸びやすさ、手術後の癒着の有無などが人それぞれだからです。上行結腸と下行結腸、直腸は固定されているのですが、S状結腸と横行結腸は固定されておらず自由に動きやすい臓器なので、元々まっすぐになっている方ではすっと入りやすいのですが曲がった状態になっているとまっすぐに入らずに伸びてループを作りやすくなっているために痛みが出ることがあります。あとは、手術後の影響で腸が癒着している場合も動きが悪くなっており痛みを伴うことが多いです。
個人差が大きいので今までに何回もやっていて大丈夫という方は鎮静剤を使用しない場合もありますが、特に初めての方だと必ずしも楽にできるとは限らないので基本的には鎮静剤を使用した方が良いでしょう。但し、鎮静剤を使用する場合は車やバイク、自転車の運転は危険ですので当日は避けるようにしてください。
2 大腸カメラを受ける前の準備
①検査前日と当日の食事
大腸カメラを受けるにあたって腸の中に便が溜まっていると視界が悪くなり盲目的な操作となるためスムーズにカメラが入っていかず痛みが出たり、ポリープなどの病変を見逃す原因になりますのでしっかりと腸の中をきれいな状態にしておくことが大事です。
まず、検査前の食事についてですが前日の夜20時までには食事を終わらせるようにしておいてください。
そして食事内容ですが、食物繊維などの消化に良くないものや脂肪分の多いものは避けるようにしてください。具体的には、野菜全般やキノコ、海藻類、こんにゃく、玄米、脂肪分の多い肉類などはNGです。おすすめは素うどんやお粥、プリンやゼリーなどが良いです。特に便秘気味の方は検査の2-3日前から注意しておく必要があります。
医療機関によっては検査前食を用意しているところもありますので、少し費用がかかりますが考える手間が省けるので試してみてもいいかもしれませんね。
②下剤(前処置薬)の飲み方
次に下剤の飲み方ですが検査前日の眠前に便秘薬を内服して、朝に便が出やすい状態にしておきます。
そして、検査当日の4〜5時間前から1~2L程度の下剤を内服していただきます。施設によって種類が数種類ありますが基本的に塩辛くておいしいものではありませんし量も多いので、よく「検査はいいんだけど、その前に飲む下剤がしんどい」という声も耳にします。
5~10回程度便が出て透明になったらOKです。全部出きってお腹が落ち着けば電車に乗っても大丈夫ですが、不安な方は下剤の内服を医療機関でできるところもあるので伺っていただければと思います。
注意点があり、もし大腸癌があって腸が狭くなっている場合に下剤を内服すると便が詰まってお腹が張ってくることがあります。最悪の場合、腸が穿孔してしまうことがあるので異常にお腹が張ってきたり嘔吐するような場合は無理して飲み続けずに医療機関を受診するようにしてください。
③内服薬の中止
内服薬は基本継続で良いのですが、注意しないといけないのが抗血栓薬(血液サラサラ薬)と糖尿病薬です。
抗血栓薬(血液サラサラ薬)
大腸カメラにおいて観察のみの場合は継続で問題ないのですが、ポリープがあった場合にこの薬を内服していると出血リスクが高くなるため切除できないことがあります。でも、これらの薬は心筋梗塞や脳梗塞など塞栓系の疾患に対する予防のために内服しているため中止することによって塞栓のリスクが高まってしまうので休薬するかどうかは事前に相談が必要です。また、血液サラサラ薬の種類によっては内服していても大丈夫なものもあります。
糖尿病薬
糖尿病の内服薬やインスリンに関しては、絶食の時に内服や皮下注を行うと低血糖になってしまう恐れがありますので基本的には中止する必要があります。但し、全ての薬で中止しないといけないわけではありませんので検査前に医師に確認してください。
3 いよいよカメラ本番
①検査の流れ
それでは、いよいよ検査に入ります!
まずは検査用の穴あきパンツに履き替えます(穴が開いている方が後ろです)。
そして、鎮静薬などを使用する場合は点滴のルートを確保してもらいます。
その後、検査台の上に左向きに横になっていただき、心電図モニターなどを装着して鎮静薬や鎮痛薬、腸の動きを抑える薬などを点滴してもらい検査開始です。はじめにお尻の穴に麻酔作用のあるゼリーを塗ってもらって、カメラを挿入していきます。途中で上向きなど体位変換してもらったり、お腹を圧迫してもらいながら一番奥までスコープを進めていき、引きながら空気を入れつつ観察していきます。途中でポリープを切除したり組織の検査を行なったりすることもありますが、概ね検査は15-30分程度で終了します。
検査終了後は鎮静剤を使用した場合は、リカバリールームという休憩所で30分ほど休んでいただきます。鎮静剤を使用しない場合は休憩する必要はなくすぐに帰宅可能です。
施設によってはそのまま結果説明してもらえるところもあれば、後日再度外来で説明があるところもあります。ポリープ切除や組織採取した場合は結果が出るのに数日間かかるので基本的に後日説明になります。
②検査による偶発症
観察のみであった場合
検査による偶発症として、同意書に出血や穿孔など多数記載があるかと思いますが観察だけの場合に出血が問題になることはほとんどなく、穿孔に関しても癒着が非常に強い患者さんなどで穿孔して緊急手術になることもなくはないですが可能性は低いです。
大腸内視鏡(挿入のみ)での穿孔率は0~0.08%といわれています
ポリープ切除を行った場合
注意しないといけないのはポリープを切除した場合です。ポリープの切除方法には焼灼を用いる場合と用いない場合があるのですが、大きめのポリープであったり癌が疑われる場合は焼灼を用いて切除を行います。この場合に出血や穿孔のリスクが高くなります。
ですので、ポリープを切除した後は数日から1週間程度は飲酒や刺激物の摂取、激しい運動は控えていただくようお願いします。
4 結果説明と今後の治療やフォロー
無事、検査が終了したら最後に結果説明です。
特に異常がなかった場合や憩室や痔があるのみであった場合は大丈夫ですが、ポリープがあり切除した場合には病理結果の説明があります。稀に癌が混在していることがあり、その場合はしっかりと取り切れているかが重要になり、遺残がある場合は再度切除する必要があり、深くまで浸潤していた場合は追加で手術が必要になります。また、ポリープや早期癌があったけど大きくて切除できなかった場合は後日入院で行うことが多いです。最後に進行癌があった場合は他の臓器に転移していないかどうかなど、全身検査を行う必要があるので速やかに検査をすすめていくことになります。
5 まとめ
大腸カメラについてひと通り説明させていただきました。
でも、百聞は一見にしかずではありませんが実際にやってみたほうがはるかによくわかると思います。今回の記事を参考にしてもらいながら、悩んでおられる方は一度思い切って検査をやってみていただければと思います!
尚、大腸カメラの費用については、内視鏡検査にかかる費用を参考にしてください。
最後に付け加えとしまして、どうしてもカメラが嫌という方や何らかの原因で大腸カメラが困難な場合、大腸CT検査や注腸造影検査、カプセル内視鏡検査など代わりの検査方法もあります。低侵襲である代わりに、それらの検査は精度面では大腸カメラに劣り検査可能な施設が限られること、ポリープの切除や生検検査はできないというデメリットがあります。
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