こんにちは、消化器内科医のべっちょむです。
今回はピロリ菌についてまるっとお話ししたいと思います。
ピロリ菌って聞いたことはあるけど実際はよく分からない、どれくらいの割合で感染している人がいるのか、いたらどうなってどうしたらいいのか、など疑問がある方多いんじゃないでしょうか。
ピロリ菌ってどんな菌なのかということから、症状や診断、治療、治療してからのことを含めて説明したいと思います。
この記事を書いた人
べっちょむ先生
資格:内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、FP2級、簿記3級
専門の消化器を中心に内科全般についてわかりやすく解説するブログです。
一児の父。映画鑑賞と温泉が至福の時。ゴルフとキックボクシングもやってます。
1ピロリ菌ってどんな菌?
まずはピロリ菌ってどんな菌かといいますと、
胃の中で炎症を起こす原因になる細菌で、1982年にオーストラリアのウォーレンとマーシャルという医師が初めて発見しました。意外と最近ですね。
当時は胃の中は酸性が強く細菌は存在できないという説が有力とされていましたが、2人は何らかの細菌が胃炎の原因ではないかと培養を繰り返していました。
それでもなかなか細菌の特定ができずにいたのですが、たまたまイースターのお祭りに5日間出かけて帰ってきたら一つのシャーレに菌体ができていたのです!それまでは2日間の培養しかしていなかったのですが、実はピロリ菌は4日間培養しないと検出されない細菌だったのでたまたま発見することができました。
この発見で2人は2005年にノーベル賞を受賞しています。
ちなみに、ピロリ菌の正式名称はヘリコバクターピロリといい、「ヘリコ」はヘリコプターのヘリコで「らせん」の意味で「バクター」はバクテリアつまり「細菌」、ピロリは胃の出口の方の部位の幽門(「ピロウス」)から由来しています。
実はピロリ菌は胃の出口(幽門)付近から胃の中を徐々に食い荒らしていくことが決まっているんです。
2ピロリ菌はどうやって感染するのか?
さて、ピロリ菌は一体どこにいてどこからどうやって人に感染するのでしょうか。
感染経路は実ははっきりしていないのですが、「口」から感染するということは確かだと考えられていて、また感染するのは2〜5歳までの乳幼児期といわれています。乳幼児期はまだ胃酸が弱くピロリ菌が生息しやすい環境だからで、成人になってからの感染は稀です。
どこにいるのかについては、上下水道の完備されていない時代の井戸水であったり土の中に潜んでいているといわれており、その時代に乳幼児期を過ごした世代では感染率が高くなっています。
現在では衛生環境が改善されて感染率は低くなっていますが、感染している親からの口移しが原因となることが多いので注意が必要です。2013年からピロリ菌の除菌が保険適応になり、感染者数は減少傾向にあります。
感染者割合は10-20歳代では10%程度、40-50歳代では30%程度、60歳を超えると半数以上が感染していることになります。そして、現在日本全体では約3500万人が感染しているといわれています。
3ピロリ菌に感染するとどうなるのか?
そして、ピロリ菌に感染すると慢性的な胃炎が起こり、場合によっては胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃癌を発症することがあります。
まずは胃の中で炎症を起こして粘膜が赤く発赤したりベタベタした粘液が付着したりするので、消化不良や胃もたれなどの症状が出ることがありますが、無症状のことも多いです。
また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を発症した場合には心窩部が痛くなったり出血を伴うと吐血や黒色便、貧血を認めることもあります。胃癌に関しては基本的には無症状で、かなり進行すると胃もたれや腹痛、黒色便など様々な症状がでてきます。
注意しないといけないことはピロリ菌がいても潰瘍ができたり進行胃癌にならないと症状が出ないことが多いということです!
まとめ
ピロリ菌の発見エピソードから感染経路、感染により発症し得る疾患などについて説明させて頂きました。ピロリ菌感染は潰瘍や癌の原因になり、特に胃癌で手術を行った人の99%にピロリ菌の関与があると言われており、自分の胃の中にピロリ菌がいるかどうか知っておくことはとても大事です。
後編では、ピロリ菌の診断方法と治療、治療後注意しないといけないことなどをお伝えしたいと思います。
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