こんにちは、消化器内科医のべっちょむです。
前回は肝臓のはたらきと肝硬変という病気の説明をしました。
実は、肝硬変と診断するのは意外と簡単ではなく、私たちも悩むことがあります。そこで、今回は肝硬変の検査と診断についてまとめていきたいと思います!
この記事を書いた人
べっちょむ先生
資格:内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓専門医。FP2級、簿記3級。
消化器内科を専門とし、病気だけでなく患者さんを幅広く診れる医師でありたいという思いから、2024年4月から訪問診療を行っています。
一児の父。映画鑑賞と温泉が至福の時。ゴルフとキックボクシングもやってます。
1 肝硬変の診断
健康な肝臓が、肝炎ウイルス感染やアルコール多飲、脂肪蓄積などにより慢性的にダメージを受けている状態を慢性肝炎といい、その状態が続いて肝臓が硬くシワシワになってしまい働きが悪くなった状態を肝硬変といいます。
慢性肝炎と肝硬変との境目が実はかなりグレーでそこを正確に診断するには肝臓に針を刺して組織を採る肝生検という方法がゴールドスタンダードになります。しかし、肝生検は肝臓に針を刺す検査のため、出血などの合併症が起こることがあり入院で行う必要があるのでハードルは低くありません。
そこで、肝生検の代用として各種の血液検査や画像検査で診断することが多いです!
2 血液検査
①一般検査
前回の肝臓のはたらきと肝硬変を参考にして頂きたいのですが、肝臓のはたらきが低下することによってアルブミン⇩、PT活性⇩、ビリルビン⇧、血小板⇩、アンモニア⇧がみられます。また、肝硬変になると肝臓が硬くなって肝臓に血流が入りにくくなり静脈に血流がうっ滞してしまいます。その結果、脾臓(血球を破壊する臓器)に血液がたくさん入りこんで血球が減少します(赤血球⇩、白血球⇩、血小板⇩)。
肝硬変だと全員がこの通りになるというわけではなく個人差は大きいです。また、それぞれの数値を組み合わせたスコアリングシステム(FIB4index、APRI)もあり、参考にすることがあります。
②肝線維化マーカー
上記の検査は健康診断などでも測定される一般的な検査でしたが、肝硬変を疑った場合に行う特別な血液検査として線維化マーカーというものがあります。ヒアルロン酸やⅣ型コラーゲン7S、M2BPGiなどがあり、単一の検査である程度の進行程度を判断出来ます。
3 画像検査
①超音波検査(フィブロスキャン)
肝硬変になると超音波検査で肝臓がゴツゴツしていたり中身が粗くなりますので大体の診断はつけることができます。
肝硬変
辺縁がゴツゴツしていて肝内部が粗雑
正常肝
辺縁がスムーズで肝内部が均一
更に、フィブロスキャンという装置で肝臓に振動を与えることにより硬さを測る方法があり、診断にかなり有用とされています。
②MRE(MRエラストグラフィー)
上記のフィブロスキャンが診断に非常に有用といわれていますが、最近更に精度の高い方法としてMRIで肝臓の硬さを測るMREという方法が出てきています。胸にプラスチックの板を乗せて振動を与えて、MRI検査で肝臓の硬さを測る方法になります。2022年より保険適応になりましたが、まだ施行可能な施設が限られているのが現状です。
3 まとめ
今回は肝硬変の検査方法と診断について解説しました。
肝生検以外は血液検査と画像検査を組み合わせて判断する必要があり、意外と診断が難しい疾患なんですね。また、症状とも合わせて評価することが大事になってきます。
次回は、肝硬変の症状について解説したい思います!
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