こんにちは、消化器内科医のべっちょむです。
肝炎を引き起こす特有のウイルスにはA型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎が存在します。
その中でもB型肝炎とC型肝炎が特に重要な立ち位置にあります。今回はB型肝炎をピックアップして解説していきたいと思います!
この記事を書いた人
べっちょむ先生
資格:内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓専門医。FP2級、簿記3級。
消化器内科を専門とし、病気だけでなく患者さんを幅広く診れる医師でありたいという思いから、2024年4月から訪問診療を行っています。
一児の父。映画鑑賞と温泉が至福の時。ゴルフとキックボクシングもやってます。
1 B型肝炎とは?
B型肝炎ウイルスは古代では鳥類に感染するウイルスであった可能性が高いといわれており、その後ヒトなど哺乳類に宿主が代わってきたといわれています。
感染が慢性化すると肝硬変や肝細胞癌の原因となるウイルスです。感染した時に急性肝炎として発熱や体のだるさなどの症状が出ることはありますが、基本的に症状はないため注意が必要です。
2 B型肝炎の感染経路
①感染経路
かつての感染経路は母子感染(垂直感染)が大半でしたが、現在は母親が感染している場合は出生児にワクチン接種や免疫グロブリン投与などを行うことにより感染予防できるようになっています。そのため、新規感染者の多くは成人してからの性交渉が原因となることが多いです。
以前は子供のころの集団予防接種での注射器の回し打ちで感染が広がったこともありましたね。給付金がでるようになっただけでもよかったです。
②肝炎の進行
実はB型肝炎ウイルスが肝臓を直接攻撃するわけではないんです。B型肝炎ウイルスが体内に入ると自身の免疫機構が働いて、その作用で肝臓に炎症が起こって肝炎に進展します。
ⅰ)成人感染
成人してから感染した場合、免疫機能が発達しているので急性肝炎として発熱や倦怠感などの症状が出ることがある(20-30%)のですが、見事ウイルス排除に至ることが多いです。また、何も症状がなく(70-80%)、ウイルス排除されることがほとんどです。総じて、成人でB型肝炎ウイルスに感染して慢性肝炎に進展するのは10%以下です。
ⅱ)母子感染、乳幼児期感染
一方で、母子感染や乳幼児期感染などまだ免疫機構が未熟な時期に感染した場合は症状はでませんが、成長とともに免疫が発達してきたときに一時的に肝炎症状がでます。その後もウイルスが排除されることはほとんどなく残り続け、10%で慢性肝炎に90%でHBVキャリアに進展します。
HBVキャリアとは、B型肝炎ウイルスは体内にいるけど悪さをしておらず共存している状態のことをいいます。治療はしなくていいのですが、悪さ(慢性肝炎化)をしないかどうか定期的に検査を受ける必要があります。
3 B型肝炎の治療
①治療対象
B型肝炎ウイルスに感染していても全員が治療対象になるわけではないんです。前述のキャリアという状態では無治療で良いですし、①慢性肝炎or肝硬変、②肝酵素(ALT)上昇、③HBV-DNA量の3項目で治療適応かどう判断します。
具体的には以下のような基準になり、治療適応と判断された場合に治療開始となります。
②治療方法
治療方法はインターフェロンと核酸アナログという2種類に大きく分けられます。
ⅰ)インターフェロン
昔からあるお薬で1週間に一度注射のために通院が必要で、48週間(約1年間)繰り返します。発熱や頭痛、倦怠感などの副作用がみられることがあるというデメリットもありますが、催奇形性がなく若年の方では使用しやすい治療法になります。日本では肝硬変患者さんには適応がなく、慢性肝炎のみ適応となっています。HBV-DNA陰性化率は約30%です。
ⅱ)拡散アナログ
2000年から導入し始められたお薬で、毎日内服していただきます。
インターフェロンと比較して副作用が少なく、肝硬変にも適応がありHBV-DNA陰性化率は60-90%と非常に優れたお薬になります。催奇形性などは明らかにはされていませんが、可能であれば妊娠中の内服は避けた方が良いとされています。
これらの治療により肝硬変への進展・悪化や発癌抑制作用もありますし、医療費助成を受けることが可能なので自己負担額は抑えることができます。
しかし、残念ながら治療を継続してもHBs抗原が陰性化するまで内服する必要があり、中止に至ることはあまりなく生涯内服し続けることがほとんどです。
4 注意しなければならないこと
①患者さん
B型肝炎は主に血液を介して感染するためケガや鼻血などで出血した場合は極力自分で処理や手当をするようにしてください。また、カミソリや歯ブラシの共用は避けて、口腔内に出血があれば危険ですので食物などの口移しも控えるようにしてください。
ステロイドや抗がん剤などの免疫抑制作用のある薬剤を使用するとB型肝炎が悪化することがあります。これはキャリアや既感染の方も注意が必要ですので頭の片隅に置いておいてください。
②患者さんの家族
患者さんのいる家族にはワクチン接種が推奨されます。抗体ができていれば基本的に感染はしませんが、患者さんの血液や体液を処理する場合には手袋を使用するなど注意するようにしてください。
5 まとめ
今回はB型肝炎について解説しました。
感染していても無症状ということが怖いところなんです。
血液検査で感染しているかどうか分かりますので健診などで一度は検査しておく必要があります。また、過去に献血などで陽性と分かっている場合でも症状がないからと放置している人がいたらかなり危険です。
気づいた時には肝細胞癌ができているなんてことも少なくありません。
次回は、もう一つの要注意肝炎ウイルスであるC型肝炎ウイルスについて説明していきたいと思います!
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