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胃癌の治療法

こんにちは、消化器内科医のべっちょむです。

前回は胃癌の見逃せない症状について解説しました。

胃癌はなかなか症状が出にくいというのが怖いですね。。
実際に胃癌が見つかってしまった場合、どういう治療を行うことになるのでしょうか?

初期は自覚症状がないことが多く発見しにくいので怖いですよね。では、今回は胃癌の治療法についてお話ししたいと思います。

この記事を書いた人

べっちょむ先生

資格:内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓専門医。FP2級、簿記3級。

消化器内科を専門とし、病気だけでなく患者さんを幅広く診れる医師でありたいという思いから、2024年4月から訪問診療を行っています。

一児の父。映画鑑賞と温泉が至福の時。ゴルフとキックボクシングもやってます。

目次

1 胃癌の治療法

胃癌は胃の粘膜の表面から発生することが多く、粘膜→粘膜下層→固有筋層→漿膜の方向に深く浸潤していきます。

粘膜や粘膜下層の一部まで浸潤した癌であれば内視鏡で切除でき、それ以上になれば外科手術で胃を切除する方法をとります。しかし、肺や肝臓、腹膜など以外の臓器に転移している場合(いわゆる遠隔転移)には化学療法(抗がん剤)や緩和治療の対象となります。

2 内視鏡治療

癌が粘膜内か粘膜下層の一部までにとどまる場合(ステージⅠ)に内視鏡治療の適応となります。

胃癌に対する内視鏡治療ではEMR(内視鏡的粘膜切除術)やESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)が行われます。

胃ESD

胃の一部を内視鏡で剥ぎ取り人工的に胃潰瘍を作るような治療になりますが、胃の大部分は残りますので胃としての機能が残せるということが最大のメリットです。ですので、治療後も食べる量が減ったりすることはなく今までと変わらない生活を送ることが出来ます

EMRとESDの違いなどは生検と切除のちがいと切除方法を参考にしてください。

ただし、内視鏡で切除した検体を病理検査で調べると事前に予想していたよりも深くまで癌が浸潤していたという場合があります。その場合は、追加で手術を行う必要がありますので、病理検査の結果が出るまでは油断できません。

3 手術

癌が粘膜下層よりも深い場合(ステージⅠ~Ⅲ)に外科的手術の適応になります。手術というのは全身麻酔をかけて手術室で行うもので、胃の1/3~全てを切除する方法です。どのくらいの胃を残せるかは癌の大きさやできた場所により判断します。また、ステージⅣでも出血コントロールがつかない場合や腫瘍による狭窄で口から食べられなくなった場合には根治目的ではないですが症状緩和目的に手術を行うこともあります。

内視鏡治療では切除できないような癌を治療できる一方で、胃の一部もしくは全てが失われますので胃としての機能が著しく低下してしまいます

残った胃の大きさにもよりますが、胃の手術後1~3ヶ月の間に10~20%の体重減少があると言われています。3ヶ月を過ぎると落ち着いてはきますが、今まで摂取していた量をお腹いっぱい食べることは難しくなります。

また、食べたものを胃にため込んで消化する機能が低下もしくは失われてしまうため、食べたものが直接腸の中に流れ込んでしまい動悸やめまい、下痢、低血糖などを起こすダンピング症候群を発症する可能性があります。

その他にも、貧血や下痢、栄養不良、骨粗鬆症などを起こす可能性があります。

また、癌のステージⅡ、Ⅲでは術後化学療法を行うことが推奨されています。

4 化学療法

癌が胃以外にも転移している場合(ステージⅣ)には手術して胃を切除したとしても全身に癌が拡がっているため予後を改善する効果が期待できません。その場合に化学療法、いわゆる抗がん剤の適応となります。抗がん剤は完治を期待できる治療法ではなく、癌の進行を抑えるというのが目的になります。

抗がん剤というと副作用が強くとてもしんどいというイメージがある方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、癌の種類や抗がん剤の種類、もしくは各個人によって副作用の出方は様々なので一概には言えませんが、最近は薬剤の向上により副作用はかつてに比べると軽減されています。ただ、どんな状態の方でもできるというものではなく、ある程度の元気さが保てていない場合は抗がん剤によって体力が落ちてしまうこともあり、適応をしっかりと見極める必要があります。

食事摂取が十分にできていることと、自分で外来に通院できるということが化学療法を行う前提条件になることが多いです。

5 緩和治療

体力的に手術や化学療法を行うことが難しいと考えられる場合には緩和治療を行うことになります。

痛みに対して医療用麻薬を含めた鎮痛を行なったり、呼吸の苦しさや吐き気、食欲低下、腹水など様々な身体的苦痛を和らげることを目的とします。これらの身体的苦痛の緩和はイメージしやすいと思いますが、それ以外にも気持ちのつらさやお金の不安、ご家族へのサポートなどもっと広い意味で緩和治療は行われます。

身体的苦痛を軽減できれば生活が送りやすくなりますし、精神的苦痛のケアによって前向きな気持ちで残された時間を過ごせるようになるかもしれません。緩和治療は諦めの選択肢ではなく、歴とした治療法の一つなのです

6 まとめ

今回は胃癌の治療方法についてまとめました。

癌の進行の程度によって治療方法は大きく変わり、その後の生活や予後も変わってきます。

                      胃癌の5年生存率

なにより早期発見が大事なことには変わりないのですが、進行癌であっても以前は開腹手術でしたが最近は腹腔鏡で手術できるようになってきていたり、本庶さんがノーベル賞を受賞したニボルマブ(オプジーボ)が化学療法の第一選択薬に追加されたりと治療方法は年々向上してきています。

みなさんも検診を受けて予防や早期発見に努めつつ、今後の医療の更なる発展に期待したいですね。

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