こんにちは、消化器内科医のべっちょむです。
胃癌ってよく聞くけど、どういう症状があるんだろう??
日本人には胃癌が多いって聞いたことがあります。自分は大丈夫かしら?
胃癌は減少傾向にありますが、まだまだ多い癌ですし、日本人では特に注意が必要なんです。
今回は胃癌についてまとめていき、見逃せない症状3選を解説したいと思います!
この記事を書いた人
べっちょむ先生
資格:内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓専門医。FP2級、簿記3級。
消化器内科を専門とし、病気だけでなく患者さんを幅広く診れる医師でありたいという思いから、2024年4月から訪問診療を行っています。
一児の父。映画鑑賞と温泉が至福の時。ゴルフとキックボクシングもやってます。
1 胃癌の罹患率と死亡率
①胃癌の罹患率と死亡率
2019年における日本における胃癌の罹患数は年間12.5万人(2位)、死亡数は4.2万人(3位)と非常に頻度の高い疾患です。欧米と比較して日本では胃癌の罹患率が5倍もあるため、特に日本人では注意しなければいけません。
男女比は男性の方が女性より2倍多く、男性の10人に1人、女性の21人に1人が胃癌に罹患する計算になります。
②胃癌の5年生存率
多くの癌でも言えることですが、胃癌も早期発見できれば予後は良くステージⅠでは5年生存率は90%以上期待できます。しかし、他の臓器に転移してしまった場合、いわゆるステージⅣでは予後は良くありません。
2020 国立研究開発法人国立がん研究センターより引用、作成
2 胃のはたらき
胃は心窩部、いわゆる鳩尾(みぞおち)に位置しています。口から入った食べ物が食道を通って胃に入り、食べたものを消化したり殺菌する働きがあります。
胃は伸びたり縮んだりして伸縮しながら食物をお粥のように軟らかくして消化します。その時に胃の入り口(噴門)と出口(幽門)が重要な働きをしていて、噴門がしっかり締まって逆流しないようにしており、軟らかくなったら幽門が開いて奥の十二指腸に進むようになっています。また、消化しながらもばい菌などが体内に入り込まないように胃酸で殺菌もしてくれています。
自分の頭でなにも指示しなくても勝手に胃が働いてくれていて人間の体って本当にすごくよくできてるんだなぁ
3 見逃せない、胃癌の症状3選
毎日知らない間にも働いてくれている私たちの胃が癌に侵されてしまった場合、胃がSOSを知らせてくれる時があります。そのSOSを見逃さないようにしたいと思う反面、残念な事実をお知らせしなければなりません。。
それは、早期胃癌では症状がなく、症状が現れたときには進行してしまっていることがほとんどということです。そして胃癌だけに限った特有の症状というのはないんです。
早期胃癌
早期胃癌はこのように胃の粘膜の表面にできる小さいもので、じわっと出血することはあるかもしれませんが症状はほぼないです。
そして、年余をまたいで大きく成長して深くまで浸潤すると進行胃癌となり他の臓器に転移します。
進行胃癌
ですが、症状が出てからも放置していてはさらに進行して最悪の場合、手遅れということになりかねません。
そこで、見逃してはいけない症状を3つ紹介していきたいと思います!
①黒色便
まずは、黒色便です。
消化管で出血が起きると赤い血が出るのですが、血液の鉄の成分が時間が経って錆びた色に変わったり、さらに胃酸で化学反応が起こり血液が黒くなります。その結果、便が真っ黒になります。濃いこげ茶色とか、少し黒いものが混じっているとかではなく本当に真っ黒の便が出ます(大腸からの出血であれば赤い血がでることが多いです)。
癌は血流を吸収しながら大きくなる性質があり、血流が豊富で出血しやすいんです。そして、胃は大腸と比べて血流が豊富で出血量が多い傾向にあるので、黒色便が見られたら早く受診するようにしてください。
胃癌以外でも、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などでも黒色便を認めることがあります。何れにしても胃カメラで早急に原因を特定する必要があります。
イカスミパスタや赤ワイン、鉄剤の内服などでも黒色便は出ますが、これらの場合は問題ありません。
②早期満腹感
これは意外と胃癌に多い症状なんです。
胃のはたらきのところで述べたように、胃は伸びたり縮んだりして伸縮しながら食物をお粥みたいに軟らかくして消化しています。胃に大きな癌があればその働きが十分できなくなって食べたものがお腹に溜まりやすくなります。
その結果、いつもより早くお腹がいっぱいになってしまうという症状がでてきます。
些細な症状なので見逃しやすく少し体調が悪いだけということもありますが、症状が続く場合は受診することをお勧めします。
③心窩部痛
最後は心窩部痛です。
進行胃癌になると胃の中に大きな潰瘍ができることが多く、心窩部に鈍痛を覚えることがあります。痛くなったり良くなったりを繰り返したりしながらも持続するようなイメージです。
胃癌の症状としての頻度は多く、これに関しても違和感や疼痛が持続する場合は早めの受診をお勧めします。
4 まとめ
胃癌についてのまとめと代表的な症状を3つ紹介してきました。
今回紹介した症状以外にも癌が進行すると体重減少や貧血の症状がみられたり、他の臓器に転移すれば呼吸が苦しくなったりお腹に水が溜まったりと様々な症状が出ることがあります。
何より重要なことは胃癌の初期には症状はなく、進行してからも胃癌特有の症状はないということです。
ですので、症状に頼って「何も症状がないから大丈夫」ということは絶対にありませんので定期的にがん検診を受診していただくようお願いします。
次回は、胃癌の治療法について解説していきたいと思います!
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