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糖尿病⑤ 非薬物療法(食事療法、運動療法)

糖尿病の治療って治すことが目標じゃなくて合併症を起こさないようにすることが目標だったんですね~

僕もそれは意外でした…

インスリンの注射をしたり飲み薬を飲んでいる友達がいますが、治療は薬に頼るしかないんでしょうか?

こんにちは、消化器内科医のべっちょむです。

前回は糖尿病の治療目標について解説しましたが、目標が糖尿病を治すことではなく合併症を起こさないということ、というのは意外だったんじゃないでしょうか?

糖尿病の治療には飲み薬やインスリン注射など薬による治療法の他に食事や運動といった治療法があります。

今回は薬以外の方法、いわゆる非薬物療法について解説していきたいと思います!

この記事を書いた人

べっちょむ先生

資格:内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓専門医。FP2級、簿記3級。

消化器内科を専門とし、病気だけでなく患者さんを幅広く診れる医師でありたいという思いから、2024年4月から訪問診療を行っています。

一児の父。映画鑑賞と温泉が至福の時。ゴルフとキックボクシングもやってます。

目次

1 糖尿病の非薬物療法

糖尿病の治療を行うにあたって、いきなり薬を始めるということは余程の悪い糖尿病でない限りはなく、まずは食事や運動習慣の見直しといった非薬物療法を行います。目安はHbA1c9.0%以下の場合にはいきなり薬物治療は行わずに非薬物療法を行います。

非薬物療法で改善が乏しい場合や、薬物療法開始となった場合でも、食事や運動などの生活習慣の改善は継続して行うことになります。

どんなにいい薬を使ったとしても食事や運動といった治療の土台ができていないと良くなりませんので、実は一番大事なことなんです。

また、今回解説する内容については完璧にやるぞ!という気持ちも悪くはないんですが、それゆえに出来なかったときに挫折してしまったり途中でやる気をなくしてしまっては意味がないので、「継続できるようにすること」が一番大事です。

2 食事療法

食事において糖尿病を悪化させない要因として最も重要なことが、血糖値の急激な上昇を避けるということなんです。

血糖値が急激に上昇して下降することを繰り返していると、インスリンという血糖値を下げるホルモンの分泌が低下しますし、分泌されていても効きが悪くなります。その結果、糖尿病が悪化してしまいます。また、動脈硬化が悪化して心筋梗塞や脳梗塞になるリスクも高くなります

①食べる順番を気にする

基本的に、血糖値を上げるのは糖質です。

ですので、食事の初めに糖質を摂取すると急激な血糖上昇を起こしてしまいますので、できれば糖質は後の方に食べるのが良いです。

糖質とは、砂糖以外にも白米や麺類など炭水化物のことを指します。
また、ジュースやサイダーなどの液体で摂取する糖分は吸収が早く最も避けたいものの一つですし、空きっ腹に一気飲みはやめておきましょう。

野菜など食物繊維が糖質の吸収を抑える働きがあるので、まず野菜を食べてからタンパク質→炭水化物の順に食べるのが良いです。

野菜(食物繊維)→蛋白質→炭水化物の順番に食べると血糖値の上りが緩やかになります。

②よく噛んで食べる

よく噛んで食べると血糖値の上昇を抑えることが出来ます。

よく噛むことで食べるスピードがゆっくりになること、また血糖値を下げるホルモン(インクレチン、インスリン)の分泌が促進されることによります。また、よく噛んで食事をしていると満腹感を感じやすく食べる量自体を減らせれることにも繋がります。

やっぱり早食いはダメですね!

③エネルギー摂取量

食べる順番を守ってよく噛んで食べても、そもそも食べる量が多すぎると良くありません。

エネルギー摂取量の目安がありますので紹介しておきます。

エネルギー摂取量(kcal)=目標体重(kg)×エネルギー係数

最も死亡率が低いBMIは22といわれており、目標体重=身長(m)²×22の計算で算出されます。

身長165㎝の人だと約60kgになりますね。

エネルギー係数とは、日常でどれくらい活動するかを示す指標です。

~エネルギー係数の目安~
軽い労作(座っていることがほとんど):25-30kcal/kg目標体重
普通の労作(座っていることが多いが通勤や家事、軽い運動を含む):30-35kcal/kg目標体重
重い労作(力仕事、活動的な運動習慣がある):35-kcal/kg目標体重

身長165㎝で通勤して仕事している人だと、エネルギー摂取量の目安は60kg×(25~30)=1500~1800kcalになりますね!

自分のエネルギー摂取量の目安をある程度知っておくことも大切です♪

糖尿病治療を開始する時に管理栄養士さんから、自分の目標摂取カロリーや炭水化物や蛋白質など各栄養素の摂取割合など栄養指導を受けることがいいですね。

3 運動療法

運動することにより、急性効果として血糖値が低下し、慢性効果としてインスリンが効きやすくなったり心肺機能の向上や高血圧や脂質異常症の改善に有効です。

運動療法には有酸素運動筋力トレーニング(レジスタンス運動)の2種類があり、両方を併用して行うことで効果がより得られます。

①有酸素運動

有酸素運動はウォーキングやジョギング、自転車や水泳などのことで、継続して行うことで心肺機能の向上が期待できます。

軽めから少ししんどいくらいの強度で、1日に20分以上の持続が望ましく週に150分以上が推奨されています。ウォーキングでは8000-1万歩/日を目標にしてみましょう。

特に、食後30分から1時間くらいの血糖値が上がりやすい時に行うと筋肉にエネルギーが使われて効果的です。

膝が痛い方など歩いたり走ったりすることが難しい方には水中歩行が有効です。

筋力トレーニング(レジスタンス運動)

筋力トレーニングは言わずもがな、腕立て伏せやスクワット、ダンベルや腹筋のことですね。

筋肉量が増えると基礎代謝量が上がり、ダイエットになるためインスリンが効きやすく血糖コントロールに効果的です。

連続しない日で、週に2-3日行うことが推奨されています。

筋肉がつくと自己肯定感も上がる感じがして、メンタル的にもいいですよね!

③運動療法の注意点

糖尿病の方が運動療法を行う際に注意しなければならないことがあります。

それは、合併症を持つ患者さんが強度の運動をしてしまうと臓器に流れる血流が不足して逆にその合併症が悪化してしまう可能性があるため、運動を制限もしくは禁止した方がいい場合があります。

①網膜症(増殖前網膜症以上)②腎不全③血糖コントロール不良(空腹時血糖250mg/dL以上)④虚血性心疾患、心肺機能低下⑤下肢壊疽
を有する方は専門の先生に相談の上で運動を行うようにしましょう。

4 まとめ

今回は食事と運動による糖尿病の非薬物療法について解説しました。

糖尿病の治療は内服薬やインスリンが目立ち主役の様な気がしてしまいますが、食事や運動療法は治療の基本、土台となるもので実は一番大事な治療方法なんです。

非薬物療法を侮らないように、地道に継続して良い習慣を作っていきましょう!

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