糖尿病は症状が出にくくて早めに検査して診断、治療しないといけないことがわかりました。
しかも最悪の場合、失明や透析、足を切断するようなこともあるんですよね。。
糖尿病の治療をしっかりしたいと思いますけど症状はないですし、何を基準に頑張れば良いんでしょうか??
こんにちは、消化器内科医のべっちょむです。
これまで糖尿病は症状がほとんど出ないので症状が出る前に診断して治療することが大事であること、治療が遅れたり悪化すると様々な合併症が生じて、最悪の場合は失明したり透析になって週3回通院したり、足を切断するような怖い事になる可能性があることをお伝えしました。
では、糖尿病と診断されて治療を行う場合、症状がないのに何を基準に治療の目標を設定すればよいのでしょう?
今回は糖尿病の治療目標について解説します!
この記事を書いた人
べっちょむ先生
資格:内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓専門医。FP2級、簿記3級。
消化器内科を専門とし、病気だけでなく患者さんを幅広く診れる医師でありたいという思いから、2024年4月から訪問診療を行っています。
一児の父。映画鑑賞と温泉が至福の時。ゴルフとキックボクシングもやってます。
1 糖尿病はそもそも何のために治療するのか?
血糖値が高いとなんとなく体に良くないことはみなさんご存じだと思いますが、糖尿病はそもそも何のために治療するのでしょうか?
実は、「糖尿病を治すため」ではなく、「糖尿病の合併症を予防するため」なんですね。
糖尿病は一度発症すると根本的に「治る」ことは難しく、共存する病気とされています。
糖尿病の合併症は基本的に動脈硬化が要因となります。
ですので、動脈硬化を引き起こす高血圧や脂質異常症についても併せて治療する必要があります。
2 HbA1cの治療目標
糖尿病の治療目標に用いられるのがHbA1cです。
HbA1cは過去1~2か月の血糖値の平均を表す値で、詳しくは糖尿病②検査と診断で説明してます。
そこで、2013年に熊本で開催された国際会議で糖尿病の合併症予防にはHbA1c<7%に抑えましょう!
という目標が掲げられました。
HbA1c<7%に対応する血糖値は、空腹時血糖値<130mg/dL、食後2時間血糖値<180mg/dLが目安となります。
細かくは、血糖正常化を目指す場合はHbA1c<6%、治療強化が難しい場合はHbA1c<8%という指標もありますが、基本的にHbA1c<7%目標という認識で良いです。
3 高齢者の糖尿病患者さんの場合
実は、高齢者では認知症の程度やADL(移動や食事、入浴などの日常生活がどのくらい自分でできるかというレベル)の個人差が大きいので、人によって目標値が違ってきます。
ここでいう高齢者とは65歳以上のことを指します。
高齢者においては「将来的な合併症の予防」よりも「現在の生活の質」を重視し、また認知症があると食事量が安定しなかったり薬の管理ができないなど低血糖になるリスクがあるので目標は少し甘めに設定されています。
また、インスリン注射や内服薬でもSU薬やグリニド薬といった薬は低血糖になるリスクが高く、それらの薬剤を使用されている場合も目標HbA1cは甘めに設定されます。
65歳以上の方での目標値は一律HbA1c<7%というわけではないので、主治医の先生に一度目標値を伺ってみましょう。
4 高血圧
糖尿病の合併症の原因は主に「動脈硬化」ですので、糖尿病以外に動脈硬化を引き起こす疾患のコントロールも大事になってきます。
血圧の目標は130/80mmHg以下で、家庭血圧(普段家で測定した時の値)は125/75mmHg以下となっています(高血圧治療ガイドライン)。
病院に行くと緊張して血圧が少し上がりやすいので、家で測る血圧は低めの目標設定になるんですね。
まずは減塩指導(食塩摂取量6g/日未満)を行い、改善しない場合や元々血圧がとても高い場合には同時に降圧薬の治療を開始します。
5 脂質異常症
糖尿病患者さんの脂質異常症の管理は厳格に行う必要があります。
目標値はLDLコレステロール(悪玉コレステロール)<120mg/dL、中性脂肪<150mg/dL。
また、3大合併症(神経障害、網膜症、腎障)を有する方や喫煙者ではLDLコレステロール<100mg/dL。
さらに、心筋梗塞の既往歴やメタボリックシンドローム、喫煙者など複数の危険因子を持つ方の場合はLDLコレステロール<70mg/dLを目標とします。
中性脂肪の目標は一律150mg/dL以下なんですね。
生活習慣の改善は脂質異常症治療の基本であり、食事療法と運動療法によって改善が期待できます。
それでも目標達成できない場合は薬による薬物療法を行います。
6 まとめ
今回は糖尿病の治療目標について解説しましたが、いかがだったでしょうか?
基本はHbA1c<7%を目標に、65歳以上の高齢者では認知機能やそれぞれの元気さ具合で目標値が変化します。
また、糖尿病だけでなく動脈硬化を引き起こす高血圧や脂質異常症など他の疾患のコントロールも必要になるということも覚えておいてください(^^)!
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