こんにちは、消化器内科医のべっちょむです。
前回まで3回連続でタバコについての記事を書いてきましたが、タバコが原因でなってしまう病気の代表疾患にCOPDというものがあります。
聞いたことがあるような無いような、、そんなCOPDについて今回は解説していきたいと思います!
この記事を書いた人
べっちょむ先生
資格:内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓専門医。FP2級、簿記3級。
消化器内科を専門とし、病気だけでなく患者さんを幅広く診れる医師でありたいという思いから、2024年4月から訪問診療を行っています。
一児の父。映画鑑賞と温泉が至福の時。ゴルフとキックボクシングもやってます。
1 COPDとは?
COPDとは、Chronic Obstructive Pulmonary Disease(慢性閉塞性肺疾患)の略でかつては肺気腫とよばれていた疾患です。
病態はひとことで言うとタバコが原因で肺の細かい部位が破壊される疾患です。
世界の死因の第3位になっており、実はメジャーな疾患なんです。70歳以上の日本人の6人に1人がCOPDになっていて実際に治療しているのは1割に満たないといわれています。
肺は肺胞という細かい袋の集まりなのですが、その一つ一つが伸びきったゴム風船の様になってしまい、うまく縮まなくなり呼吸がしにくくなります。また、気道という空気の通り道が狭くなり息を吐くのが大変になります。
2 COPDの症状
症状としては、少し動いただけなのに息が苦しくなる労作時の呼吸困難感と、呼気時(息を吐く時)の呼吸困難感が特徴的です。その他にも、咳や痰がでたりヒューヒューゼーゼーと音がする喘鳴という症状が出ることがあります。
また、呼吸がしんどくなるため首の筋肉が発達したり、息が吐きやすくするために口をすぼめて呼吸する口すぼめ呼吸がみられることもあります。
3 COPDの検査
①スパイロメトリー
COPDの検査で最も重要なものがスパイロメトリーという、いわゆる肺活量の検査です。息を大きく吸って、勢いよく吐いてもらう検査で診断ができます。
②レントゲン検査
COPDでは肺胞一つ一つが伸びきってしまうため、肺が大きくなります。肺の過膨張といい、レントゲン検査で黒い部分(肺)が大きくなっていることがわかります。但し、このような所見は進行した例でみられ、初期の段階でははっきりとはしません。
③CT検査
レントゲン検査では分からないような初期の段階でもCT検査では細かい評価ができます。COPDだけでなく、間質性肺炎や肺癌など他の病気を調べることもできます。
4 COPDの治療
治療は大きく分けて普段の安定している場合と悪化した場合に分けて考えます。
①安定期
ゴム風船のように伸びきってしまった肺胞が元に戻ることは難しく、治療は症状の軽減や増悪予防が中心になります。
ⅰ)非薬物治療(禁煙、呼吸リハ、栄養療法、酸素療法)
COPDの治療で何より大切なものが禁煙です。
どんなにいいお薬を使ったとしてもタバコを吸い続けていれば結局は焼け石に水です。まずは禁煙してから治療を始めるようにしましょう。禁煙できればその後の肺機能の低下率は元々吸っていない人と同じといわれています。
歩くことがCOPDの予後を左右すると言われており、呼吸リハビリテーションの一環だと思って頂ければわかりやすいかもしれません。肺のリハビリと体力をつける目的ですね。
他にもCOPDになると呼吸するのに体力を使うようになってしまい、痩せやすくなります。そのため、高エネルギー・高タンパク・高脂質な栄養を摂ることが大事です。
最後に、COPDが進行すると日常生活でも酸素投与が必要になります。在宅酸素療法(HOT)といいますが、自宅で過ごす時も外出する時も酸素ボンベを持ち歩いて行動しないと呼吸が苦しくなってしまいます。
ⅱ)薬物療法
薬物療法の中心は吸入治療になります。
気管支拡張薬やステロイドを吸入して気管支を拡げたり炎症を抑えることで呼吸を楽にしてくれます。
②増悪期
普段より息切れや痰、咳などの症状が悪化して通常の日常変化を越えた症状になることを増悪といいます。
肺炎やインフルエンザなどの感染や大気汚染が原因で増悪に至ることが多いです。
治療は基本的には入院で気管支拡張薬や抗生剤、ステロイド、酸素投与などを行います。
COPDの急性増悪は命に関わることもあるもので、さらに一度増悪すると繰り返してしまうことも少なくなく、反復すると肺機能と体力が低下して生命予後に影響します。
そうならないように予防と早期に治療を受けることが大事です。
ⅰ)予防
予防は普段の手洗いとうがいの励行とワクチン接種(インフルエンザ、肺炎球菌、COVID-19)、吸入薬の継続も増悪の予防になります。
ⅱ)早期治療
COPD増悪の前兆を見逃さないことが大事です。
安静にして座っていても呼吸がしんどい、咳の回数が増えている、痰の量が増えて黄色い痰がでるようになってきた、熱がある等の症状がある場合は早めに医師に相談して、増悪の前に対応もしくは増悪初期から治療できるようにしましょう。
5 まとめ
COPDというのは肺全体がゴム風船みたいに伸びきってしまった状態であり元に戻ることはありません。肝臓でいう肝硬変のようなものです。ですので、そうなる前に禁煙をすること、なってしまってからはそれ以上進行しないように禁煙すること、治療を継続すること、増悪を予防することが大事です。
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