
今まで下痢ばっかりだったのに最近は便秘になってしまって、病院で処方されているお薬を飲んでもなかなかでなくて困ってます。



便秘ってお腹が張ってきて食欲もなくなるし辛いですよね。



トイレに籠ってなかなか出れなくてつらいです泣
こんにちは、消化器内科医のべっちょむです。
便秘って意外と結構辛いですよね。
病院で処方される便秘薬って色々ありますし、毎日使っても良いものとそうでないものがあることは御存じでしょうか?
また、比較的最近になって種類が増えて使いやすい薬が出てきてますので、今回は病院で処方される便秘薬についてまとめていきます!
1 はじめに
便秘は食物繊維不足や水分不足、ストレス、加齢などで起こりやすく、多くの人が悩む日常的な症状です。
一般成人(全年齢):約10〜20%
高齢者(65歳以上):約30〜40%
高齢女性や施設入所者:50%以上になることもあるといわれておりご高齢の方では半数近くの方が便秘といっても差し支えないでしょう。
大腸がんにより腸の通り道が狭くなって便秘になることもあり、大腸癌ではないということが前提で便秘の治療を開始します。



まずは大腸カメラなどで大腸がんの除外をすることが大事です。
便秘の治療にはさまざまな薬が使われます。
今回は病院でよく処方される便秘薬について、刺激性下剤と非刺激性下剤と直腸刺激型(坐薬・浣腸)に分けて、それぞれの特徴や使い分けのポイントをまとめました。
2 便秘薬の分類
- 非刺激性下剤:自然な排便を促すタイプ。長期使用が可能。
- 刺激性下剤:腸を直接刺激して排便を促す。頓用に向いている。
- 直腸刺激型(坐薬・浣腸):肛門側から作用する速効型。即効性重視の頓用薬。
3 非刺激性下剤
モビコール(ポリエチレングリコール)


- 作用機序:腸管内に水分を引き込み、便を柔らかくする(浸透圧性下剤)
- 作用時間:1〜3日
- メリット:習慣性がなく長期使用可、小児や高齢者にも安全
- デメリット:効果が出るまで時間がかかる、腹部膨満感の可能性
大腸カメラをする前に飲むモビプレップという大量の液体を内服ししたものです。最もマイルドで副作用も少なく欧米では第一選択薬として使われています。粉を水に溶かして飲むので外出中では少し使いにくいというデメリットはあります。
酸化マグネシウム(マグミットなど)


- 作用機序:腸内で水分を保持し便を柔らかくする(浸透圧性下剤)
- 作用時間:6〜12時間
- メリット:安価で安全性高い
- デメリット:腎障害患者では高Mg血症リスク
古くからあるお薬で日本で最もよく使われている便秘薬です。
まずはこれから始めて効果が乏しければ他を追加することが多いですね。
アミティーザ(ルビプロストン)


- 作用機序:Cl⁻チャネル活性化→腸管分泌促進
- 作用時間:0.5〜1日
- メリット:自然な排便を促す、慢性便秘・女性に有効
- デメリット:吐き気などの副作用あり、妊娠中禁忌
基本は朝夕内服で2回内服にはなりますが、便の状態次第で1回にすることも可能です。
規格は12μgと24μgがあり、便秘の程度によって調整します。
リンゼス(リナクロチド)


- 作用機序:グアニル酸シクラーゼC受容体刺激→水分分泌+腸管運動促進
- 作用時間:数時間〜1日
- メリット:腹部症状(膨満・痛み)にも効果
- デメリット:下痢が出やすい、空腹時服用が必要
食前に1回内服なので便利です。食後に内服すると効きすぎて下痢してしまうので注意してください。
1回2錠で便が緩くなる場合は1錠に減量してもよいです。
グーフィス(エロビキシバット)


- 作用機序:胆汁酸トランスポーター阻害→胆汁酸が大腸に流入して分泌促進
- 作用時間:12〜24時間
- メリット:自然な排便に近く習慣性が少ない
- デメリット:食前服用が必要、下痢の可能性
リンゼスと同様に食前1回で良くて、2錠で便が緩くなる場合は1錠に減量してもよいです。
食後に内服するとリンゼスとは逆で効果が減弱するので注意して下さい。
4 刺激性下剤
刺激性下剤とは腸の神経に作用して、「便を出して!」と命令して強制的に便を排出するお薬になります。
出したいときにスッキリ出しやすいというメリットがありますが、お腹が痛くなったり、連用していると同じ量では効果が薄れて量を増やさないと効かない(耐性ができる)というデメリットがあります。腸が刺激を受けすぎて感覚がマヒしたような状態になってしまいます。
毎日内服するのではなく、便が出ないときに頓服で内服するお薬になります。



効かないからどんどん内服量が増えて、1日に100錠も飲んで腸が破れたという話を聞いたことがあります。
センノシド(プルゼニドなど)


- 作用機序:大腸神経を刺激し蠕動運動を促進
- 作用時間:6〜12時間(就寝前服用→朝に効果)
- メリット:即効性がある
- デメリット:長期使用で耐性・依存・習慣性のリスク
ピコスルファートナトリウム(ラキソベロンなど)


- 作用機序:腸の神経を刺激し蠕動運動を亢進
- 作用時間:6〜12時間
- メリット:液体で調整しやすい、高齢者に使いやすい
- デメリット:腹痛・下痢、習慣性のリスク
刺激性下剤は薬局でも市販でよく販売されており、センナやアロエ、大黄などの記載のあるものは全てこのタイプなので注意してください。防風通聖散も大黄が含まれており、以前に痩せ薬として流行ったこともありますが良くないです。
5 直腸刺激型
レシカルボン坐薬


- 作用機序:腸内で発泡し直腸を物理的に刺激→排便反射を誘発
- 作用時間:5〜15分
- メリット:非常に速効性があり、安全性高い
- デメリット:効果は一時的で、根本的な便秘解消にはならない
お尻の近くに硬い便が詰まってるときにはガスが逃げずに腹痛や腸閉塞になったような腹部膨満感が出ることがあるので、先に摘便や浣腸で出す必要があります。
グリセリン浣腸


- 作用機序:直腸への物理刺激とグリセリンの潤滑作用
- 作用時間:5〜10分
- メリット:即効性があり、緊急時や手術前・検査前に有用
- デメリット:使いすぎると直腸感受性が鈍くなり、依存を招く
浣腸は飲最終手段の位置づけで、飲み薬で効果がない場合や出口付近に硬い便が詰まってしまっている場合に潤滑剤として有用です。
6 使い分けまとめ
分類 | 薬剤名 | 特徴 | 使用のポイント |
---|---|---|---|
非刺激性 | モビコール、酸化Mg、アミティーザ、リンゼス、グーフィス | 自然な排便を促す、習慣性なし | 長期使用・慢性便秘向け |
刺激性 | センノシド、ピコスルファート | 即効性あるが習慣性あり | 頓用や短期使用向け |
直腸刺激型 | レシカルボン坐薬、グリセリン浣腸 | 数分で効果、即効性重視 | 緊急時・排便困難時に使用 |
7 さいごに
「便が出ない…」と思ったら、まずは大腸がんではないかどうかを確認しましょう。
便秘薬にもいろんな種類がありますが、即効性を求めるのか?自然な排便を目指すのか?で選び方が変わります。
慢性的な便秘には非刺激性の薬をベースにしつつ、必要時に刺激性や直腸刺激型を併用するのが基本です。
水分や食物繊維不足、運動不足など、様々な要因で便秘になることが考えられるので、生活習慣の改善で便秘を予防・改善していければベストですよね。
次回は便秘の予防に関する生活習慣の改善について解説していきます!
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