こんにちは、消化器内科医のべっちょむです。
今や世界一の高齢大国となった日本では高齢者の割合、数ともに増加傾向にあり、認知症が社会問題になっています。
認知症の家族がいて困っている方はもちろん、家族、もしくは自分が認知症になってしまう可能性もありますので、認知症とはどういう疾患なのか、知っておくと役に立つことが必ずあるはずです。
今回は、認知症の特徴的な症状である中核症状について解説していきます!
この記事を書いた人
べっちょむ先生
資格:内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓専門医。FP2級、簿記3級。
消化器内科を専門とし、病気だけでなく患者さんを幅広く診れる医師でありたいという思いから、2024年4月から訪問診療を行っています。
一児の父。映画鑑賞と温泉が至福の時。ゴルフとキックボクシングもやってます。
1 認知症
認知症は私たちの周りにもよく聞く、ありふれた疾患ですよね。
ちなみに日本において2025年に65歳以上の高齢者は人口の約30%に達するのですが、65歳以上の5.4人に1人が認知症になると予測されており、相当な数の認知症患者さんがいることになります。
みなさん、認知症というと「物忘れ」というイメージはあると思いますが、実際にはそれ以外にもたくさんの症状が現れます。
また、ひとことで認知症と言ってもアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、脳血管性認知症など種類も多数あるんですね。それぞれに特徴的な症状はあるのですが、中核症状はどの認知症でも(いずれは)必ず現れます。
一方で、中核症状をもとに患者さんの性格や環境などによって出方が異なる症状のことを周辺症状(BPSD)といいます。
2 認知症の中核症状
どのタイプの認知症でも現れる中核症状を5つに分けて説明していきます。
①記憶障害
まずは記憶障害。これは一番よく知られた症状ですね。
いわゆる物忘れなのですが、特徴は記憶の一部というよりはその時期に体験したこと全ての記憶がすっぽりと無くなってしまうということです。また、昔の記憶よりは最近の記憶の方が障害されやすいという特徴もあります。
②見当識障害
次に、見当識障害とは聞き慣れない用語だと思いますが、
1.時間や季節、2.場所、3.人や人間関係が分からなくなることです。
具体的には今がいつで、ここがどこか、自分の今置かれている状況や他人との人間関係性の把握が出来なくなります。
以下に、症状の例を挙げていきます。
1.時間や季節
今日が何月何日かわからない。時間が守れず遅刻する。季節が分からないので季節外れの服を着てしまう。
2.場所
外出すると家がどこか分からなくなって帰れずに徘徊する。家にいてもトイレの場所や自分の部屋が分からない。病院に入院しているのに家にいると言う。
3.人や人間関係
息子に会っても誰だか分からない。ヘルパーさんのことを娘だと言い出す。亡くなった親に会いに行くと言う。
③理解判断力の低下
認知症になると物事の理解に時間がかかったり、十を聞いても一しか理解できないような状態になります。また、一度に複数のことを言われても処理することが出来なくなったり、曖昧な表現の理解も難しくなります。
④実行機能障害
4つ目の実行機能障害とは、順序立てて物事を行うことが出来なくなったり、予想外のことが起こった場合に他の方法で対処が出来なくなることをいいます。
⑤失語・失認・失行
これも聞き慣れない難しい用語ですよね。
言葉、認識、行動が障害されて思うようにいかない状態です。
以下に、例を挙げていきますね。
1 失語
思っていることを上手に伝えられない。呂律が回りにくい。意味不明なことを言う。言葉の理解ができない。
2 失認
お茶を見ても「お茶」だとわからない。夏で暑いのに「寒い、寒い」と言って服を着こむ。
3 失行
シャツが着れない。お茶を入れられない。箸を使ってご飯を食べられない。
普段普通に当たり前にできていたことができなくなります。
3 まとめ
いかがだったでしょうか。認知症は単なる記憶障害だけでなく、このように様々な症状が出てくるんです。
今回ご紹介した中核症状は、認知症になると(いずれは)必ず出てくる症状ですので分かりやすい症状、逆に言うと家族側からすると備えやすい症状とも言えるでしょう。
中核症状をもとに症状の出方が患者さんの性格や環境によって異なる周辺症状(BPSD)というものがあり、特に家族や介護者が悩まされることが多い症状なんです。
次回は、その周辺症状(BPSD)について解説してまいります!
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