夫のいびきがうるさくて、途中で息が止まってる時もあってしんどそうで心配です。
それって睡眠時無呼吸症候群じゃない?
それ聞いたことあります!どんな病気なんでしょうか??
こんにちは、消化器内科医のべっちょむです。
睡眠時無呼吸症候群という病気、みなさん一度は聞いたことがあるんじゃないでしょうか?
ただ夜寝ている時にいびきがうるさくて日中に眠たいって病気ではないんですよね。様々な病気の原因となり、最悪の場合突然死なんてこともあり得る病気なんです。
今回は睡眠時無呼吸症候群についてお話していきたいと思います。
この記事を書いた人
べっちょむ先生
資格:内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓専門医。FP2級、簿記3級。
消化器内科を専門とし、病気だけでなく患者さんを幅広く診れる医師でありたいという思いから、2024年4月から訪問診療を行っています。
一児の父。映画鑑賞と温泉が至福の時。ゴルフとキックボクシングもやってます。
1 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?
①睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群は英語でSleep Apnea Syndromeと表記され、頭文字をとって医療者の間ではSAS:サスと略して呼ばれることが多いです(これからはSASと略して説明していきますね)。
通常は鼻や口から息を吸うと喉を通って呼吸が出来るのですが、何らかの原因で通り道が塞がってしまい呼吸が出来なくなってしまう状態をSASといいます。原因として最も多いのが肥満です。
多くの場合が肥満によるものなのですが、扁桃腺腫大(アデノイド)や小顎も原因となるので細身の方でも起こることはあります。また、睡眠薬や飲酒によりのどの緊張が緩むことにより悪化したり、頻度は少ないですが心不全や脳卒中により脳の呼吸中枢が働かなくなってSASを引き起こすこともあります。
②睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状
症状としては、いびきが有名ですよね。
他にも息が苦しくなって何度も目が覚めたり、熟睡できないために日中に眠たくなったり頭痛がするといった症状が現れます。2003年に起こったJR新幹線の事故でSASが注目を浴びましたね。トラックやタクシードライバー、電車の運転手さんなどの運転業務に携わる方はSAS検診が義務付けられています。
実はSASになるとそれだけではなく様々な合併症があるのです。
2 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の合併症
①心筋梗塞、脳梗塞
夜間寝ている間に寝苦しかったり、起きたり寝たりを何十回も繰り返す日々を毎日何年も繰り返していると血管にストレスがかかり血管がボロボロになってしまいます。その結果、心筋梗塞や脳梗塞を発症してしまうリスクが高まります。心筋梗塞は突然死する疾患ですし、脳梗塞は麻痺が残ってしまう疾患です。
SASが原因で突然死や麻痺が残るのは怖いですよね。
②高血圧
SASがあると慢性的に体に負担がかかるため高血圧の直接原因になります。SAS患者の50~90%に高血圧を合併し逆に高血圧患者の30%にSASを合併すると言われています。この場合、一般的な降圧薬が効きにくくSASを治さないと高血圧が治りにくいことがわかっています。
③糖尿病、脂質異常症
SAS患者さんに糖尿病や脂質異常症が合併することが多いです。
これに関してはSASが直接関わっているかどうかは明らかにはされておらず、肥満の方が多いことによる可能性もあります。糖尿病、脂質異常症は心筋梗塞や脳梗塞の原因になるため、特にSASがある方はしっかり治療しておく必要がありますね。
3 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査
SASの検査は2段階に分けられます。簡易ポリソムノグラフィーで異常があった場合にフルポリソムノグラフィーを受けて頂き診断します。
①簡易ポリソムノグラフィー
「SASが心配…」と思ったときにまず行うのが、簡易ポリソムノグラフィーです。
自宅で寝るときに鼻にカニューレという気流センサーを装着し、指にパルスオキシメーターという酸素の数値を測る装置を付けます。これでどれくらい呼吸が止まっている時があるか、酸素の数値が下がっているかどうかを分析します。
希望すれば誰でも検査可能で、検査費用は3000円程度(3割負担の場合)です。
②フルポリソムノグラフィー
簡易ポリソムノグラフィーで異常が検出された場合に、フルポリソムノグラフィーを行うことになります。
これは脳波や心電図、体位センサーなど様々な装置を付けて10項目を測定します。精度は非常に高いのですが、自宅では出来ず一泊入院で検査を行います。費用は入院費込みで3~4万円(3割負担の場合)ほどかかります。
4 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療
SASの治療法についてお示ししたいと思いますが、その前に肥満の方はダイエットを頑張ってください!
体重が10%減量すれば、睡眠時無呼吸の回数が25%減るということが分かっています。元々が重症のSASであれば減量しても必ずしもSASが治るという訳ではないのですが、改善が見込めるのは間違いないですので肥満の方は減量を心掛けながら、以下の治療を行っていきまましょう。
①CPAP
SAS治療の基本はCPAPになります。
CPAPとは鼻から空気を送り込む装置のことで、呼吸を補助する役割を果たしてくれます。
患者さんの呼吸に合わせて呼吸が止まり始めたら空気を強めに送り込んで、止まらない状態が続けば弱くするようにできています。
このように、空気の通りが悪かったところにCPAPで空気を送り込むことにより呼吸が出来るようになります。
寝ている間中すっと装着するのではじめは慣れるのに時間がかかるかもしれませんが、慣れればCPAPがないと寝れない!という方も少なくありません。どうしても慣れないという場合には、マスクの固定の仕方や呼吸器の設定が正しくないことや鼻詰まりがあることがあるので処方医に相談してみましょう。
②マウスピース
また、睡眠時にマウスピースを装着するという方法もあります。
マウスピースを装着して、下顎を上顎よりも少し前に出して舌の根本が喉元に落ちにくくする方法です。とても簡便で便利な方法ですが、顎が小さくてSASになっている方に特に有効な治療法で肥満の方や重症の方にはマウスピースだけでは不十分なことが多いです。
③手術
毎日CPAPを付けたり定期的に病院に通院するのが面倒くさくて手術で邪魔なものを取り除きたい!と考える方もおられると思います。手術という方法も実際にあり、具体的には軟口蓋の一部や口蓋扁桃、口蓋垂(のどちんこ)を切除します。
しかし、狭くなっている部位を切除すれば改善するのかというと、切除した部位より奥の扁桃腺が腫れてる場合は効果が乏しい、再発することもある等の理由で実際には4人に1人くらいしか効果がないと言われています。
さらに、術後に比較的痛みがある治療ですし出血のリスクがあることなどを考えるとあまりおすすめはできません。
5 まとめ
いびきがうるさい、寝ている時に呼吸が止まっていると言われる、日中異常に眠たいなどの症状がある場合はSASの可能性があります。最悪の場合、突然死にもつながる疾患ですので気になる場合はまずは簡易ポリソムノグラフィー検査を受けてみましょう。ちなみに簡易ポリソムノグラフィーであれば近所のクリニックでも行える所が多いですよ!
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