こんにちは、消化器内科医のべっちょむです。
今回は肝臓のはたらきと、肝硬変というテーマについて解説していきます。
肝臓は500以上もの仕事をしているといわれており人体にとってとても重要な臓器なんです。少し専門的な内容になりますが、肝硬変の理解にもつながりますし要点絞って解説しますのでしっかりついてきてくださいね!
この記事を書いた人
べっちょむ先生
資格:内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓専門医。FP2級、簿記3級。
消化器内科を専門とし、病気だけでなく患者さんを幅広く診れる医師でありたいという思いから、2024年4月から訪問診療を行っています。
一児の父。映画鑑賞と温泉が至福の時。ゴルフとキックボクシングもやってます。
1 肝臓のはたらき
肝臓の働きは主に、代謝・貯蔵・胆汁生成・解毒の4つに分けられます。
①代謝:たんぱく質(栄養分・凝固因子)の合成
栄養分
食事で摂取したアミノ酸が腸で吸収されて、肝臓に集められてたんぱく質(栄養分)が合成されます。このたんぱく質の中でもアルブミンという物質が重要です。アルブミンは水を引っ張ってくる作用があるので、この数値が低くなると血液の中から水が漏れ出して足が浮腫んだり、お腹に水が溜まってしまいます(腹水)。
凝固因子
血が出たら自然に止まったり、かさぶたができたりしますよね。この時に血小板という血球や様々な凝固因子が働いています。この凝固因子を肝臓が作っています。
肝硬変になると凝固因子が減少するだけでなく、脾臓が大きくなって血小板も破壊されて減ってしまいますので、ダブルパンチで出血しやすくなります。
②糖分、中性脂肪、ビタミン、鉄の貯蔵
糖分はグリコーゲンという姿に変えて肝臓で蓄えられているんです。そのため朝昼晩の食事だけでも、特に朝方など空腹時にグリコーゲンが分解されて血中に糖分が維持できるようになっているんですね。他にも中性脂肪やビタミン、鉄なども肝臓で蓄えられて、必要な時に体内に送り出される仕組みになっています。
③胆汁の生成
胆汁には赤血球の老廃物である黄色い色素のビリルビンと脂肪の消化を助ける胆汁酸が含まれます。胆汁は肝臓で合成されて、胆嚢でため込まれ胆管を通って十二指腸に流れていきます。何らかの原因で体内にビリルビンが溜まってしまうと体が黄色くなる黄疸という状態になります。
④解毒作用(アルコール、アンモニア、薬物)
お酒を飲んだ後にアルコールを吸収しているのは胃と小腸ですが、その後肝臓がアセトアルデヒド→酢酸の流れで解毒してくれています。飲みすぎた時に肝臓がこの処理を十分にしきれずにアセトアルデヒドの血中濃度が高くなると、二日酔いの症状がでます。他にも、アミノ酸から合成された有毒なアンモニアを無毒な尿素に変えたり、様々な薬物を解毒して尿や胆汁中に排泄しています。
必要なものを合成したり貯蔵して不要なものを解毒して体外に排出するような仕事をたくさんしていて、肝臓は体内の工場みたいな存在ですね。
2 肝硬変とは
これだけたくさんの仕事をしてくれている肝臓ですが、肝硬変という病態は肝炎ウイルスや脂肪肝、アルコール摂取など様々な原因で長期にわたって肝臓がダメージを受け続けてシワシワの状態(線維化といいます)になってしまったことをいいます。すなわち、肝臓の働きが全体的に悪くなってしまい同時に多数の不具合が生じてしまう状態です。更に肝臓癌や消化管静脈瘤など致死的な疾患を合併することもある非常に恐ろしい病態なんです。
3 まとめ
今回は肝臓のはたらきと肝臓の機能が低下した病態が肝硬変であることをお伝えしました。
次回から、肝硬変の症状や検査、治療についてくわしくお話していきたいと思います!
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