こんにちは、消化器内科医のべっちょむです。
胃潰瘍ってストレスが原因でなりやすいって聞いたことがあります。
お腹が痛くなるイメージだけど、昔塾の先生が胃潰瘍で命を失いかけたことがあったって言ってたよ。
胃潰瘍は少しお腹が痛くなるだけのものから緊急手術が必要になったり、命に関わることもある疾患で決して侮れません。
今回は胃・十二指腸潰瘍について説明したいと思います!
この記事を書いた人
べっちょむ先生
資格:内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、肝臓専門医。FP2級、簿記3級。
消化器内科を専門とし、病気だけでなく患者さんを幅広く診れる医師でありたいという思いから、2024年4月から訪問診療を行っています。
一児の父。映画鑑賞と温泉が至福の時。ゴルフとキックボクシングもやってます。
1 胃・十二指腸潰瘍
胃潰瘍(出血例)
十二指腸潰瘍
①症状
症状としては、心窩部の不快感や嘔気など軽度のものから心窩部痛や吐血、黒色便を来すこともあり、さらに潰瘍が深すぎると穿孔(穴が開くこと)を来して激痛が生じることもあります。但し、鎮痛薬により潰瘍ができている場合などでは痛みを感じないこともあるため注意しなければいけません。
また、胃潰瘍では食後に、十二指腸潰瘍では空腹時に痛みが出ることが多いです。
②好発年齢
胃潰瘍は30~60歳代、十二指腸潰瘍は20~30歳代に多く、十二指腸潰瘍は胃潰瘍と比較してやや若い世代に起こりやすいです。但し、高齢化に伴い、どちらも高齢者にも起こることが多くなってきています。
また、男女比は男性の方が2〜3倍なりやすいといわれています。
2 胃・十二指腸潰瘍の原因
胃・十二指腸潰瘍の原因はピロリ菌と解熱鎮痛薬(NSAIDs:非ステロイド性抗炎症薬)が二大柱です。
①ピロリ菌
ピロリ菌といえば胃癌の原因の99%以上を占める菌であるとこれまで説明してきましたが、胃・十二指腸潰瘍の原因にもなります。胃癌だけでなく潰瘍の原因にもなるため、やはりしっかりと検査、除菌を行う必要があります!
くわしくは、ピロリ菌とは?(前編)、(後編)をご参照ください。
②解熱鎮痛薬(NSAIDs:非ステロイド性抗炎症薬)
NSAIDs(エヌセイズと呼びます)というタイプの解熱鎮痛薬の飲みすぎには注意が必要です。
具体的には、以下の薬剤がNSAIDsと呼ばれるものです(カッコ内は商品名)。
アスピリン(バファリン、バイアスピリン)
ロキソプロフェン(ロキソニン)
ジクロフェナク(ボルタレン)
インドメタシン(インダシン)
痛み止めは胃が荒れやすくなるという印象をお持ちの方もいるんじゃないでしょうか。上記薬剤を定期的に内服されている場合は、胃が荒れやすく潰瘍ができることもよくあります。
潰瘍のでき方としてはピロリ菌が原因のものと比較して浅い潰瘍が多発することが多いです。
他にも、喫煙やステロイド、ストレスなども原因の要素として挙げられます。
精神的ストレスだけでは潰瘍を作るまでにはなりませんが、ピロリ感染など胃にダメージがあってさらにストレスが加わると潰瘍を作ることはあります。
3 胃・十二指腸潰瘍の検査と治療
①検査
検査は胃カメラで行います。何らかの症状があって検査することがほとんどで、出血している場合には止血処置を行う必要がありますのでバリウム検査は不向きです。
また、胃潰瘍は良性のものと、悪性新生物(がん)が潰瘍を形成するものもありますので、より詳細に観察したり生検の検査を提出する必要があるのでそれも胃カメラで行っていきます。
②治療
治療は原因の除去と胃酸分泌抑制薬を行います。
ピロリ菌除菌後の潰瘍再発リスクは2%以下といわれており、NSAIDs服用によるものであれば内服を中止する必要があります。どうしても痛み止めが必要な場合は胃酸分泌抑制薬も一緒に内服するようにしてください。
胃酸抑制分泌薬の中でも種類があり、PPIやP-CABを内服していれば潰瘍は基本的にはできません。
よくロキソニンと一緒に出される薬でレバミピド(ムコスタ)やファモチジン(ガスター)などがありますが、PPIとP-CAB以外では潰瘍を予防するのに十分ではないことがあります。
NSAIDsをたまに内服する分には問題ないのですが、定期的に内服する場合はPPIかP-CABを内服する方が良いですね。
また、潰瘍の程度により出血している場合は胃カメラで止血を行い、貧血が進んでいれば輸血も行います。しかし、全例胃カメラで止血できるわけではなく、出血がひどい場合には血管内治療(アンギオ)や手術を行うこともあります。さらに、穿孔(穴が開くこと)してしまった場合には緊急手術となります。
4 まとめ
今回は胃・十二指腸潰瘍について大まかな内容をお伝えしました。
冒頭でもお伝えしたように、程度によっては命に関わることのある疾患ですので決して侮ってはいけません。原因がはっきりしておりピロリ菌の除菌治療や痛み止めの多用を控えるなど予防できることも多い疾患ですので、是非みなさんも知識の一つに入れておいてもらえればと思います。
また、心窩部痛や黒色便などが見られた場合は早めに医療機関を受診して検査してもらうようにしてください。
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